笹木珠代(たまちゃん)
神戸大学 国際人間科学部子ども教育学科 4年
夕方の色が好きなので、最近は夕方に散歩しています。
「あなたの小さな声が、柔らかく灯されますように」
石井夏海(なっちゃん)
大阪大学 法学部国際公共政策学科 4年
ひなたぼっこをしながら自分なりのヨガをするのが最近の日課です。
「皆様の毎日が健やかでありますように」
目次
はじめに
皆さんこんにちは!HiDANE代表の久保嘉春です!
今回取材を受けてくれたのは、神戸大学の笹木珠代(たまちゃん)と大阪大学の石井夏海(なっちゃん)です。
2人は関西を中心に活動する”アカリノタネ”の発起人で、僕たちが「日常において忘れそうになることを思い出させてくれる。」そんな居場所を作っています。
そんな、たまちゃんとなっちゃんの思いや、活動を通して何を伝えていきたいのかについて、お話を聞きました。
自分を見つめ直したい方、温かい居場所を求めている方には是非読み進めていただきたいです。
「ただいま」と「おかえり」から始まる場所
アカリノタネとは
アカリノタネ
暮らしの中に「あそぶ」と「大丈夫」と「贈る」の循環を。
古民家で月に一度、キャンドルと過ごす時間を紡いでみたり、お母さんの料理の音を聴いてるみたいなラヂオをやったり。大阪、京都、神戸、尼崎、などの関西を中心に、そんな日常の温かさを感じ取れる居場所を作っています。
アカリノタネは2018年10月に生まれました。
発起人はなっちゃん、たまちゃんの2人でしたが、2020年からみっちーこと光橋遼くんも加わりました。みっちーはなっちゃんと同じ大阪大学の学生でオムライスが好きな学生です。
そんな3人がアカリノタネの”大家さん”として活動しています。
この”大家さん”というのは、アカリノタネで言う”運営”のことです。
「大家さんみたいにあったかく見守りたい」
「参加してくれる方と一緒に場を紡ぎたい」
という想いから、「大家」という表現をしています。
そんな大家の3人が大事にしている言葉があります。それは
「おかえり」「ただいま」「いってきます」「いってらっしゃい」
どうして2人はこの言葉を大事にしているのでしょうか。それは発起人の2人が出会いに遡ります。
アカリノタネを作ったきっかけ
左:たまちゃん 右:なっちゃん
みなさんは、「家族には口に出して言わなくても意思疎通ができてしまう」なんて経験ありませんか?
笹木珠代(たまちゃん)は昔からそんな家族というものに興味がありました。
“家族って、なんだろう。私が思っているよりももっとひろい定義で、「かぞく」を再定義できるんじゃないか。いろんな人との関係性の間に、”家族”を構成している要素を置いてみたら、どうなるんだろう。”
そんな事を考えていたある日、同じことに興味を持っていた石井夏海(なっちゃん)に、出会います。
そして2人は話していく中で、
「この世界にはいろんな人が生きていて、どうしたら違いを受け入れながら生きていけるのかな」
「家族みたいな繋がりが作れたら、お互いの価値観を認め合える居場所を作ることができるんじゃないかな」
と考えるようになりました。
そこで2人は、家に帰った時、家から出る時に言う、「おかえり」「ただいま」「いってきます」「いってらっしゃい」の言葉を大切にしています。
「いってきます」の先にある、それぞれの何か挑戦することを乗り越えるために、いつでも戻ってこれる場所。
そんな
“お守り”のような場所を作りたい。
この思いからアカリノタネは始まりました。
“ヒカリ”ではなく”アカリ”
2人の活動のモチベーションはどこにあるのか。それは、「不思議だな〜」「なんでだろう〜」「こんなものができたら面白いんじゃないかな!」そんな純粋な好奇心。
しかし、自分たちのやりたいことに執着しすぎると、きてくれる人の視点を無視してしまうことにも繋がる。好奇心が怖くなることがあるといいます。
そこで2人が意識し続けているのが
“ヒカリ”ではなく”アカリ”
ということです。
好奇心だけで突っ走ってしまうと、いつの間にか、1つの光が強く存在してしまって、他の色がかき消されてしまう。
一方で”アカリ”は多様な色が存在している状態。大家と来てくれた人があって初めて”アカリ”になります。
イベントを通して来てくれる人が感じることはそれぞれ。その違いを受け取りながら、イベントを作ることをアカリノタネは大事にしています。
安心しながら孤独になれる場所を作っている
自分自身と対話する
ご飯を囲んでみんなで対話する時間ってすごく大事ですよね。いろんな人の話が聞けるし、楽しい時間を過ごせます。
でも、アカリを1人で囲んでもいいんじゃないかな?
アカリノタネでは、みんなと話す時間に加えて、自分と対話する時間も大切にしています。
イベントは基本的に古民家やカフェなどを借りて行われ、そこにあるのは、絵本とみんなが作るあったかいご飯とキャンドルの明かりだけ。
そんな
“他者を感じながら安心して孤独になれる空間”
をアカリノタネは作っています。
実際にイベントに参加してみました!
イベント会場に行くと、たまちゃんが受け付けで「おかえりなさい」と言って出迎えてくれました。
会場の中に入ると、そこはキャンドルの明かりと、かすかに火が揺れる音だけ。参加者はじっとキャンドルを見つめていました。
空いている席につき、絵本とご飯が渡されました。いつもはカレーを作っているそうですが、確かその日はご飯とお味噌汁と揚げ物。
じっとみんなと同じようにキャンドルを見ると、キャンドルに移る自分を見ていることに気づきます。不思議な感覚でした。
そのあとはテーブルを囲み、みんなと話す時間。たわいもないことや悩みを話す時間。そこには笑顔、悲しみ、苦しみ、希望。色んな表情と”今”がありました。
最後に1人ずつ感じたことを話してイベントは終了。
取材用にカメラを持って行きましたが、シャッターを切れませんでした。参加者が自分自身に向き合っていた空間があったからだと思います。
そんな空間を作り出すアカリノタネは、本当にかけがえのない居場所なんだと、実際に参加してみて感じることができました。
アカリノタネの「今」と「これから」
アカリノタネの「今」
新型コロナウイルスの影響で、イベントとしては活動ができない状況です。でも、変わらず居場所は作りたい。
そこで、現在は”アカリノタネラヂオ“というラジオをSpotifyにて開催したり、SNSを活用しながら、アカリノタネの場を作っていってます。
ラジオは不定期開催で、大家の3人の予定が空いた時にしているそうです。台本は全く決まってなくて、今日こんな本を読んだ〜今日の空は〜とかざっくばらんな話をしています。
宮崎県高千穂町の方をゲストに迎えて、行きたくてもなかなか行くことが難しい森を、ラジオのなかでみんなで歩いてみたりなど、本当に自由に配信しています。
“タネラヂ”が“生活のBGM”みたいな存在になりたいと話してくれました。
アカリノタネの「これから」
もともと贈り物をするのが好きなタイプだと話す2人。活動を始めたときは好奇心だけでやっていました。そうすると、来てくれた人たちの反応があまり良くなかった。
しかし、イベントを通して大切な人が増えてきた。相手が喜ぶという新鮮な喜びがあることを知ります。
このように、最初は贈るというのが精一杯でしたが、贈っていく過程で、受け取ってくれる人の存在に気づくことができた。
「これからは活動を通して、贈る、贈られる人がいるというかけがえのなさを、いろんな人と出会って行きながら、一緒に感じていけたらいいなと思っています。」
そう話してくれました。
やりたいこと
時代性を取り入れていきたい
今、新型コロナウイルスの影響もあり、世界が揺れていて、日常が日常ではなくなっていると感じています。
不確実な時代になった時に、アカリノタネがどう存在していくのかが問われている中で、
時代の一瞬一瞬をうまく感じながら、それによって変化していくアカリノタネを、面白がっていきたい。
そして、今後アカリノタネを通して生まれる物語が、世界のかけがえのなさに委ねられているものであればいいなと思っています。
アカリノタネ郵便をやりたい
「”贈る”を贈る」をコンセプトに、大事な人に想いを届ける「言い訳」をアカリノタネで生み出せたら。
留学中で離れて暮らすなっちゃんと手紙を送り合っていた体験から、「贈り物」には、離れている距離や、その物に込もった時間までもが、嬉しいものになることに気がつきました。
なかなか大切な人に会うことが難しい状況であっても、離れている距離すら愛おしく思えるような”贈る”をお手伝いできたらいいなと思っています。
日常に溶け込んだアカリノタネを作ってみたい
街の片隅に出現したり、ちょっと動き回ってみたり。”屋台”というカタチで、「大丈夫」「あそぶ」「贈る」と一緒に街に飛び出してみたい。
そんなことを構想しています。
アカリノタネ美術館をやりたい
今考えてるのは、完成品を展示するのではなくて、自分もその美術館の一部になれる美術館。
- 料理の音だけがする部屋
- キャンドルが点っている部屋
- お話できる部屋
- 来てくれた人たちで重ねていける絵の部屋
- 手紙を描ける部屋
このような沢山の部屋で作られた美術館を、作ってみたいと考えています。
求めること
もっと色んな人の話を聞いてみたい!
「アカリノタネは生き物だと思っています。」
生き物に栄養が必要なように、アカリノタネは、いろいろな人との出会いによって生かされてきました。
その栄養をどう循環させるのか、それが「アカリノタネをこれからどう存在させ続けるのか」というところに繋がってきます。
だからこそ、もっと沢山の人に出会い、いろんな話が聞きたい。
その1つ1つの出会いから受ける新しい価値観や世界観が、アカリノタネの栄養になっているのではないか、と思っています。
アカリノタネをもっと沢山の方の「ただいま」と「おかえり」の場所にするために。
最後に
大家が話してくれた、「アカリノタネは生き物だ。」という言葉が印象的でした。
それは、色んな人やものに出会って、栄養を受け取り、それと同時に栄養を与えていく。
そんな相利共生の循環を作っていくことができれば、もっと沢山の人の心に、”アカリノタネ”が芽吹くのだと、僕は取材を通して感じました。
そして、アカリノタネの育て方は2人にしかわからない。むしろ、2人にもわからないように思いました。
おそらく大事なのは、その新種のタネを見つけ出した2人ともう1人の大家であるみっちーの3人が、育て方を探しながら進んでいく姿こそが、アカリノタネの一番の栄養になる。ということではないでしょうか。
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